ビオラ、すずらん、年下の君


何が言いたいんだろう……?


馬場友の真意が分からなくて、私は困惑した。


「佐原、飲みにケーションとかどうよ?サシでよ?もち、割り勘で」


「…そういうのはちょっと…お断りします」


げー!
何言い出すの、こいつ。冗談じゃない!


「ノリ悪りぃなあ。今月、かなり業績悪りぃんだよ。どうしてだと思う?」


「さあ…」


「さあってなんだよ?
前から思ってたんだけど、お前、俺のことバカにしてるだろ?」


「してませんよ。馬場友さんの思い過ごしです」


え、なになに…私、からまれてる?おかしな流れの会話に私の心臓はバクバクと早鐘を打ち始める。


「そんなら、ばかにしてないって証拠見せろよ」


「…はあ?」


椅子に座ったまま私は心底呆れて馬場の顔を見た。


「何おっしゃってるんですか、もう…」

つい、少し笑ってしまった。でも馬場友の表情は変わらなかった。


「…お喋りはやめて、仕事に戻りましょ?ね、馬場友さん?」


なだめるように言って、くるりと私が身体の向きを変えた時。


男の手が、ぐいっと思い切りの力で椅子の背を引いた。


「きゃあ!」


椅子ごとひっくり返りそうになり私は悲鳴をあげた。


「馬場友さん!何するんですか」


私が咎めると、馬場友は不気味な薄ら笑いを浮かべ、私を見下ろした。





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