ビオラ、すずらん、年下の君
「あああ、ゴメン、そんなつもりじゃ…」
「なーんて、嘘だよ。見つめられると照れるからやめてよ」
緩やかな弧を描いて、キリッとした瞳の目尻が下がる。
わかこ、と生意気に呼び捨てにするところもカワイイ。
それにしても紫外線ヤバイ。私はバッグから日傘を出し広げた。
「俺が差してあげる」
屈むようにして入ってきた聡太君が傘の柄を奪った。
バスの時もそうだけど、時々、妙に慣れ慣れしかったりする。
こういうところが聡太君の魅力なんだけど女からしてみれば、たまらないよ。
私に気があるのかな?って思っちゃう。
さぞかし、モテるんだろうな……
彼女…多分いるよね。
いや、いないハズがない!
私の白い日傘で相合傘しながら歩いていると、砂浜が現れた。
「波の方まで行こうよ」
聡太君が私を誘い、私はサンダルの足元を気にしながら渚へ歩き出した。
「和香子、大丈夫?歩きにくい?」
「ううん、大丈夫」
「…気持ちいいな、砂浜って」
茶色がかった柔らかそうな髪が潮風に揺れ、漆黒の瞳が私の胸を射る。
この子は容姿端麗と言う言葉がピッタリ。それなのに、本人は自分の外見がすごく魅力的だということに気付いてないみたい。
適度に鈍感で適度に自信があって。
でしゃばらないけど、ドキッとするようなこと言ったりする。