ビオラ、すずらん、年下の君


見た目ももちろんだけど、聡太君の内面も大好き。


「足、痛いの?」

聡太君がふいに私の顔を除きこんだ。


「砂がサンダルに入ってきて気持ち悪いの。私、足の裏、敏感だから」


「マジ?お姫様だっこしてあげようか?」


ほら。さらりと、すごいことを言ってのける。


「だ、大丈夫!我慢出来る!」


冗談だと分かっているのに、私の顔面は見る見るうちに真っ赤っかに染まってしまう。
年上女として、情けない。

7歳も年下の子に翻弄されるなんて…


「ね、新江ノ島水族館、行かない?」


私はすぐそばにあるベージュの建物を指差した。


「んー、いい。予備校行くつもりだったから、金ねえし」


「私、出すよ。お魚見たいし、助けてもらったお礼したいな」


社会人年上女の本領発揮。
なんてね、大したことは出来ないけど、入館料ぐらいおまかせあれ。


「えー、マジ?中1の時、遠足で来た以来だよ。嬉しいなあ」


唇がきゅうっと横に広がる笑顔。
甘え上手なんだな。


夏休みだから、そこそこ水族館は混んでいた。
小さな子供を連れたファミリー客が多い。私と聡太君は人垣から覗き込むようにして、色とりどりの海の生き物達を眺める。





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