ビオラ、すずらん、年下の君
短パンを履いたやんちゃそうな小学3,4年くらいの男の子と美しいコリー犬が写っていた。
「わあ、カワイイ!これ聡太君?ワンちゃんもカワイイ!珍しいね、コリーも飼ってたの?名前何?」
「ハッピー。すげえ、賢かったよ」
かった…という過去形。それで今、この気高い犬がどこにいるのかが分かった。
「この頃は千葉に住んでた。海がすぐそばだったから、朝と夜、海岸を散歩させるのが俺の仕事だったんだ」
いつもキリッとした目を優しく細める。聡太君の内面の綺麗さが滲み出てる。そんな目を女性の前でしちゃダメ…誰もがめろめろになっちゃうじゃん。
「コリーと砂浜散歩なんて羨ましいなあ」
というか、聡太君とそんな時を過ごしていたハッピーが羨ましい。
何かを思い出した聡太君の片方の眉が、ふいにクッと歪んだ。
「中3の秋、ハッピーが突然歩けなくなって。脳腫瘍が見つかったんだ。ものすごく進行が早くてあっと言う間に死んじまった。悲しかったなあ。俺が5歳の時うちに来たから俺の弟分的存在だったんだ」