ビオラ、すずらん、年下の君

「良くないって。で、 一応、カナダにいる親に電話で相談したんだ。

今までIT系の進路考えてたんだけど、獣医学科のある大学受けたいって。そしたら、あんまりいい返事貰えなくて。

生き物相手の仕事は大変だし、この頃動物病院も過当競争になってきて、個人で開業するのも賭けみたいなものだよって…暗にやめろって感じに言われちまって」


ふう…と聡太君は短いため息を吐いた。

将来の夢と悩みを打ち明けてくれてすごく嬉しかったけれど、私、イマイチ良い励ましの言葉が浮かばなかった。

17歳の少年の未来が眩しすぎたのかもしれない。


「聡太君は親思いだから、遠慮しちゃうんだね。でも、それは違うと思う。
夢があるなら、それに向かって進まなきゃ」

「そうだよね…そうだよな」

ありきたりなことしか言えなくて歯痒かったけれど、聡太君は真剣な眼差しで頷いた。自分を納得させるように、水平線の遥か彼方を見つめている。


「この子を守ってあげたい…」

ふとそんな気持ちになる。

聡太君が愛しくてたまらない。
男とか女とかじゃなく。





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