ビオラ、すずらん、年下の君


だって、聡太君の身体からは雨と汗の混じった匂いが…そして、プンプン、エッチなオーラがただよってきている感じなんだもの。


もちろん、嫌な感じじゃない。いや、むしろイイ。…なんか、こっちがムラムラっていうか、ザワザワ胸が騒ぐっていうか…言葉にはならない不思議な感情。


「やべ…ここって」

聡太君が辺りを見回した後、気まずそうに俯いた。


「何?」

「いや、タダの偶然だけど」


珍しく口ごもり、目線が落ち着かない。頬っぺたが薄っすら赤くなってる。

向かいの歩道に何人か傘を差した人がいる。


「あ、もしかして、知り合いがいたとか?」


年上の女と一緒にいるところを見られてしまって、後でどう言い訳しようか困ってしまっているのかも。


「知り合いとかじゃなくて…」


「あ、お友達?どうしよう、彼女さんの耳に入ったら、気を悪くしちゃうね。もし、何か揉め事になりそうだったら、彼女さんに私の電話番号伝えて。聡太君は弟みたいな存在です、て言ってあげるから!」


「弟…?」


私の言葉に聡太君は、目を見開いたまま固まっていた。


「どうしたの?」

「…彼女なんていねえし」


不貞腐れたようにつぶやいた。
え?彼女いないんだ、意外!






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