ビオラ、すずらん、年下の君
そんなオドロキの余韻に浸る間もなく、なんか周囲の空気がおかしいと気が付いた。
傘を差した人々が、ジロジロこっち見てる。なぜか、笑ってる人も。


「ねえ、さっきから変だよ?なんでだろう…私達、なんか目立ってない?」


聡太君が真っ赤になって、ぼそりと呟いた。


「あ~…ここラブホの前だし」

「えっ!」

振り向くと、後ろは駐車場で車が数台止まっていた。すぐそばにフリータイムだのSTAYだの書いてある看板……
つまり私達、世間様の目には、入るか入らないかで揉めていたカップルに写っていたワケで。


「嘘お!ここダメ!」

聡太君の腕をがっしり掴んで走り出した。
雨はまだまだ降っているけど、とりあえず移動しなきゃ!

1分くらい走って、コンビニの軒先に避難した。
慌てて移動したから、ビチャビチャ雨水が飛び散って靴の中まで浸水しちゃった…
聡太君のデニムのハーフパンツも裾の色が変わっている。


「あ~また濡れちゃったね…」


私がハンカチを貸そうとすると、聡太君は、いらない、と小さく手を降った。

「そう…」

不機嫌そうな態度に、私は悲しくなってしまった。







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