ビオラ、すずらん、年下の君


ふう、と大きなため息が漏れた。

聡太君のことも気になるけど…
目下の重要課題は、馬場友のことだ。

これからどうするかな…
あんなことがあった以上、何もなかったように出勤なんか出来ない。

もし…あの時、聡太君が来てくれなかったら…最悪の事態になっていたかもしれない…

怖かった。馬場友は、ふざけていたわけじゃなかった。
確かに私に危害を加えようとしていた。


昼間の記憶が蘇り、私の身体がブルブル震え出した。


このままじゃ、暗闇の中に閉じ込められてしまう。ひとりで抱え込んじゃだめ。


私はスマホを手に取り、電話帳を開く。


羽田さんに相談しよう。


羽田さんの声が聴きたかった。
でも、いくらコールしても羽田さんは出てくれなかった。


まだ仕事してるのかな…?
車通勤だと前に言っていたから、運転中なのかもしれない…


あきらめて、スマホをベッドサイドに置いた時。
トントンと部屋のドアがノックされた。

お母さんかな?でも、そうなら「わかこ、開けるよ!」とか大声で叫ぶはず。


「はあい、どうぞ」

寝っ転がったまま返事をすると、かちゃりとドアが開いた。


「…和香子、俺。入っても大丈夫?」


少しだけの隙間から、聡太君の声がした。





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