ビオラ、すずらん、年下の君

このメールを読んだ次の日。

私は勤務先の人材派遣会社【トルネード・スタッフ】を退職届けを郵送した。


羽田さんに相談した上で決めたことだった。やはりもうこれ以上、仕事を続けることは出来ない、という結論になった。


あの日のことは私の中で完全にトラウマになってしまい、会社のことを考えるだけで涙が溢れてしまうようになったから。
こういうのって、その時は驚きの方が先立って、怒りや悲しみ、心を傷付けられたことには気付かない。あとからジワジワくるものなんだ、と知った。


事件の日、羽田さんとは夜11時近くになって、やっと電話連絡が取れた。
羽田さんは仕事関係の知人の葬式に出席していたのだ。

私からセクハラ事件を知らされた羽田さんは激怒して、私の代理人として会社に直接メールして、事実確認と謝罪を要求した。


もし、このメールを無視することがあれば、警察に被害届けを出すつもりだと書いたせいか、すぐに担当者から返信があった。

ことを荒立てる気は、こっちだってない。早く忘れたいというのが本音。

だけれど、有耶無耶にしてしまえば、馬場友はまた同じような過ちを繰り返すかもしれない。



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