ビオラ、すずらん、年下の君


毎朝9時ごろになって、朝ご飯を食べに1階に降りてくる私に、母は心底呆れ顔をした。


「聡太君なんて夜中の1時過ぎまで勉強してるのに、朝7時にはご飯食べにくるよ。11時くらいにお夜食におにぎりなんか差し入れしてあげるんだけど、私が入ったことすら気付かないくらい集中してるの。

和香子、不規則な生活をしていたら、身体がおかしくなるわよ?
お仕事をしないならしないで充電期間だと思うから構わないけど、それなら家の事、お手伝いしてよ」


私が会社を辞めた原因を知らない母は、半分本気で怒っていた。


あんなこと心配性な母に話したら相当ショックを受けてしまう。
絶対話せない。

私は冗談めかして、はいはい、と言って肩を竦めた。

もう…と母は溜め息をついたあと、いい事を思いついた、という風に、あっと声を上げた、


「和香子、聡太君のお夜食作ってあげなさいよ。あの子、うちにくる前はスナック菓子を夜食代りしてたのよ。身体に悪いわ」


「えっ」


聡太君に夜食。
一瞬、戸惑ったけれど、暇を持て余した私は、ちょっと嬉しくなった。

凝った料理は出来ないけど、夜食ならうどんとか、雑炊とか簡単なメニューで済みそう。あ、サンドイッチでもいいかな?







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