ビオラ、すずらん、年下の君
きっとお姉さんのこと大好きだったんだろうな。

話せないよね…19歳の若さでこの世を去ってしまうなんて。
こんな悲しい出来事が身近にあるなんて…

ぴん、とある考えが浮かんだ。


もしかしたら。聡太君は。

私の中に亡くなったお姉さんの姿を見つけたのかもしれない……

それがいつのまにか18歳の男の子の中で変換されて、聡太君は私に恋をしていると勘違いしているんじゃない?


だから、あんなに自然に私と馴染んだ。人懐こくバスで隣の席に座ってきたのもそう考えれば納得が行く。

聡太君は…




夜になると秋の虫がうるさいくらいだ。
窓を開けると少し冷たい空気が心地良い。

夜10時。窓を開けたのはキンモクセイの香りが嗅ぎたかったから。

うちの庭に植えられている大きなキンモクセイの木は、私が生まれた記念にお父さんが植樹したもの。

結婚とか入学とか成人式とかお祝いごとや人生の節目があった時、市役所に申請すると、苗木がタダで貰えるんだって。


椿や紫陽花など数種類ある中でお父さんは、女の子が生まれたんだからいい香りがする花がいいだろうっていう理由でキンモクセイを選んだ。




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