ビオラ、すずらん、年下の君
「あら、和香子。どうしたの?」
キッチンの物音を聞いたお母さんがパジャマ姿で現れた。
「あ、うるさくしてゴメン…今夜は私が夜食作るよ」
「そう。あら焼きお握りにするの?胡麻油少し混ぜるといいわよ」
私が手にした小さなボールの中のタレを覗き込んだお母さんは、にっこりと笑った。
「聡太君、喜ぶわよ。洋食より和食派だって言ってたから…ああ、眠い……助かるわ。今日草むしりしたから腰が痛くて…」
ふああ、と大きなあくびをして母はキッチンのドアを閉めた。
それから私は3個の握り飯とフライパン上で格闘した。
刷毛を使い、表面にタレを塗ってはお握りをひっくり返す、という作業を何度も繰り返した。
キッチンに香ばしいお醤油の臭いがして、私の胃袋がキュルルと音を立ててしまった。
10分後。やっと出来上がり!崩れることなくうまくいった。カリッカリの茶色い米粒はいかにも美味しそうで、嬉しくて鼻歌が出ちゃう。
木製のトレイに焼きお握り3つとワカメのインスタント味噌汁、麦茶の入ったグラスを載せた。
一輪挿しに差したキンモクセイの小枝も脇役に添えて。