ビオラ、すずらん、年下の君
それは、さっき夜の庭に出て、花の沢山ついた枝を選んで切ったもの。甘くて優しい香りを聡太君に届けたかった。
犬小屋で寝ていた柴犬の鈴蘭が起き出し、キュンキュン鳴いて私を切なさそうにみてたっけ。だから鈴蘭にもキンモクセイの束の匂いが嗅がせてやったけど、ワンコには興味ないみたい。
鈴蘭は色気より食い気だね。
プイッとそっぽを向いて犬小屋に入っちゃった。
爺ちゃんやお母さんは寝ているので、極力静かに廊下を歩き、聡太君のいる部屋をノックした。
「聡太君、開けていいかな?」
「…どうぞ」
聡太君のハスキーな声。
ふすまを開けると聡太君は炬燵で勉強していた。
長い脚のあぐらをかいた膝の上には、ブラッキーが真っ黒なモップみたいになって気持ち良さげに眠っていた。
「あれ?何?」
うちのお母さんでなく、私がいることに聡太君はかなり驚いていた。
「うん。今夜は私が夜食係。仕事辞めたでしょ?だから暇を持て余してるの。せめてお料理覚えようかなって。味は保証出来ないけど…ブ
ラッキー、ダメでしょ。こんなところで寝ちゃって。聡太君の邪魔だよ」