ビオラ、すずらん、年下の君
なんとなく会話の邪魔にならないよう気を使ってくれているように感じた。
「ううん。ちょうどキリがいいし、腹減ったなと思ってたんだ。早速頂きまーす」
「じゃ私もご一緒していい?
焼きお握り、3個のうち、実は1つは私のだったりするの」
「良かった。こんなに食えないと思ってたし。食べ過ぎすると眠くなるから。そうして。ダイエットにもなるし」
聡太君はテーブルの上の本を片付けながら悪戯っ子みたいに笑った。
私も焼きお握りにかぶり付いた。
「あ、美味しい!」
「うん、美味い」
先に声を上げたのは私の方。
外はパリパリ、中はホクホク。
甘い味付けのタレもいい具合に染みてて。点数付けるなら80点!
「初めて作ったのに、すごい、私!」
1人で悦に入っていると聡太君が2個目に手を伸ばした。食べるの、はやっ!
「へえ。和香子初めてなんだ。俺、焼きお握りバージン貰えて嬉しいなあ」
「…えっ!」
バージン…って。聡太君の言い方は戯けていたけど、そのセリフから『焼きお握り』を覗いたら大変なことにならない?考え過ぎて、私の頬はほんのりと赤くなる。