ビオラ、すずらん、年下の君
そんな私を見て、聡太君も自分が放った言葉の際どさに気づいたのか、真っ赤くなる。
話を変える為か、
「あ、これいい匂いがするやつだ」とキンモクセイの一輪挿しを指さした。
「今日、学校から帰ったら鈴蘭とガラス窓越しに目が合っちまって。遊んでくれアピール、ヤバくてすっげえキュンキュン鳴くから、庭に出て撫でてやってたら、甘くて超いい匂いがしてきた。なんだろうって思ったら、これなんだ」
そう言って、オレンジ色の花を付けた小枝にそっと触れた。
私が1番好きな花に興味を示してくれたことで、なんだか聡太君に一体感を感じてしまう私。ふわふわ幸せな気分だ。
まるで、その香りを嗅いだ時のように。
「そう。今、庭のキンモクセイ満開なの。すごくいい匂いだから、少し切って飾ろうかなって。聡太君嫌い?嫌なら片付けるから」
小さなガラスの花瓶を出窓においた。なんともいえない甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「それ、キンモクセイっていうんだ。よく見かけるけど、名前知らなかった…嫌いじゃないよ」
「嘘お!キンモクセイ知らないなんて信じられない!そこらじゅうに植えてあるのに」
私がからかうと、聡太君は少し赤くなった。嫌いじゃない、なんて嘘。