ビオラ、すずらん、年下の君
聡太君は少し皮肉屋な面があるから、素直に好きって言わないんだ。お見通しだよ。
「俺、花の名前とか覚えられるの苦手なんだ…朝顔とか向日葵とか百合と薔薇くらいしかわかんない」
恥ずかしそうに眉を顰める表情が可愛らしくて、私はクスクス笑い出してしまった。
「…あ、ゴメンゴメン。男の人ってそうかもね」
「へえ。俺のこと男だって意識してくれてるの?」
聡太君の声がわずかに尖った。いきなり突っかかるような物言いをされて私は少し怯んだ。
まるで、女教師に反抗する生徒みたい。でも聡太君は口調とは裏腹に平和にズズッと味噌汁を啜った。
目線は合わせない。ちょっと不自然に感じ。
私は黙り込んでしまった。言いたいことは分かってる。聡太君はこないだの返事が聞きたいんだ。
悪いのは、はぐらかしている私……
「和香子さあ、勘違いしてる!」
焼きお握りを食べ終わった聡太君は、ぴんと伸ばした両腕を後ろに付いて身体を倒した。不貞腐れた風に言う。