ビオラ、すずらん、年下の君
「こないだは誰とも付き合ってないって言ったけど……
今はお付き合いしてる人がいるんだ。聡太君にコクられる少し前、上司だった人に結婚前提で交際を申し込まれてて。
先週、その人と旅行に行って正式に付き合うことに決めたの。
ぶっちゃけ聡太君は私の好みドンピシャでこうやってお話するだけで楽しい。年は離れてるけど恋人同士にもなれるかもしれない。でも長続きしない気がするの」
「…へっ」
聡太君は片手で髪を掻きむしった。
しばらく下を向いたまま、目を瞑っていた。ショック隠しきれない感じ。やっぱりか…一応望みは持ってたりした?
なんだろう…私もう退散した方がイイかな?
「俺より結婚選んだわけだあ!」
思いがけない聡太君の言葉は、矢のように私の胸に突き刺さった。
「嫌な言い方しないで」
私はとっさに膨れっ面を作った。打算的な女だ、と言われたみたい…内心ショックだった。
目の奥がじわりと熱くなったけど、間違っても涙なんかこぼさないよう、わざと剽軽に振舞った。
「仕方ないよ。聡太君が22歳で社会に出た時、私は30歳目前なんだよ?
同僚の女の子や取引先の営業の女性と飲みに行ったりする機会あるかもしれない。会社の仕事の延長線上とはいえ、疑心暗鬼になっちゃう。
そういうの辛いよお!」