ビオラ、すずらん、年下の君


「すごいこと言うね、和香子さんて…」


「やだ!やっぱ変な意味に取っちゃった?違うの、今のは言葉のアヤで」


「びっくりしたよ。意外だなあって」


私が耳まで真っ赤になるのと対照的に聡太君は落ち着き払ってる。自分だってさっき「バージンがどうの」とかカナリきわどいこと言った癖にさ。


「ならさ……ハグなら男女関係ないよね~?」


聡太君が視線を合わせず、歌うように言った。


「えっ?」


「受験戦争に1人で耐える哀れな少年をハグして!」


両手を伸ばして戯ける。
でも、そうでもしないとこの場が湿っぽくなっちゃうからしてるって分かった。強がってるの。


「…いいよ。じゃあ、ハグしよ!
立って、和香子」


「はいはい」


立ち上がり、私が両手を伸ばすと聡太君は身をくるりと翻し、私の背中に両手を回してきた。


私も聡太君の背中に手を回した。


ポンポンと叩いたら、聡太君も私の背中を軽く叩いた。


「受験頑張るのよ。北海道にいったら遊びに行くから」


「うん」


ジャージ姿の聡太君の身体からはほんのりと石けんの匂いがした。
優しい温もり。


性別とか恋愛とか関係ない私と聡太君の関係。
まるで再会を果たした友達同士になった気がした。






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