ビオラ、すずらん、年下の君


お式の後、ホテルのロビーで私にお祝いのすずらんとビオラの小さなブーケをくれた。

すずらんの涼やかな白と鮮やかな緑。ビオラの気品ある紫。シルバーの繊細なレースリボンでひとまとめにして。

「花嫁のイメージで選んだんだ」って言ってくれた。


可憐な小花達から祝福されてるみたいに思えて、私はつい涙をこぼしてしまった。
ぶっちゃけ、嬉し涙なんてプロポーズの時も流さなかったのに。

生意気。でもカワイイ年下の君。


「……ありがとう。聡太君」


隣にいた亮さんも聡太君に小さく頭を下げた。


「立派な男になれるな」


「いえ」


聡太君が照れ臭そうにする。


「聡太、式の後、食事会するから。遅れんなよ。高級フレンチだからって緊張すんなよ」


「大丈夫っすよ」


亮さんがからかって、周りの大人達が笑う。私の両親。おじいちゃん。

そしておじいちゃんに寄り添う、病気が治って元気になった和服姿の稲子さん。


なんと、老いらくの恋が実り、2人は正月早々、正式に夫婦になったのだ。


入院中の献身的な爺ちゃんの看病が稲子さんのハートを射止めたらしい。つまり私と聡太君は従兄弟になったの。


「聡太はすげえな。国大かよ」


聡太君とは、うちに結婚の挨拶に来た時に顔を合わせたのが初対面でその時以来2度目。それなのに亮さんは、すっかり聡太君のことがお気に入りだ。

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