ビオラ、すずらん、年下の君


私と羽田さんのデスクは向かい合わせになっているから、毎日会話をする。

ちなみに私の仕事は、主に派遣先の会社や登録者のデータの管理。それから来客や電話対応、簡単な掃除。

トイレ掃除はビル管理会社に雇われたおばちゃんがやってくれるなら、免れている。


ほとんど会社に顔を見せないエグゼクティブ・マネージャー(ここで1番エライ人)やエリア・リーダー(まあ、営業課長かな)は、ちょっと胡散臭いおじさん人達で苦手だけど、羽田さんがお父さん的に優しい人だから救われてる。

狭い事務所に2人ということが多いけれど、嫌じゃない。

やることやって時間が余ったらスマホ弄ったり、カタログ雑誌を見たりしてる。
暇な探偵事務所みたいなんだ。


こうして、どら焼きを食べながら【吉田聡太君】の話もしちゃったりしてるし。


「聡太君の存在は、私にとって心のオアシスみたいなもんです。日々、家と職場の往復でしょ?それなのに、朝、ちょこっと逢ってお話するだけで、もう私の人生、薔薇色に成っちゃうんだから。
羽田さん、そういうのないですか?」


私は、最後のどら焼きの欠片を口に放りこんだ。





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