ビオラ、すずらん、年下の君
羽田さんの満面の笑みを見ながらこんなことなら、ハンカチも付ければ良かったかな?と私は少し後悔した。
それにしても予想以上に喜んでくれてる。
羽田さんてば…よほどモテナイんだね…
そういやあ、ネクタイはちょっと太すぎるし、今時、おばちゃんでもしないようなグレーのアームカバーしてるし。
でも、顔も性格も悪くない。
まあ、こんな職場じゃな…出逢いもないし。可哀想……
って、それ、私にも言えることか!
その一日、羽田さんはいつにもまして上機嫌だった。
立て続けにやってくる求職者の面接を軽快にこなし、
「ちょって出掛けてくるワ」
と夕方、ふらっと外出したと思ったら30分もしないうちに戻ってきて、小さな白い箱を私に差し出した。
「はいよ」
近くに出来たばかりの有名洋菓子店のロゴ入りだ。
「あ、どうも…」
今、食べないと悪いかな…
もうすぐ退社時刻なんだけどな…
中を開けると、カラフルなケーキが窮屈そうに並んでいた。
「あれ?4個も入ってますよ?」
私がびっくりしていると、
「それ、家にお土産に持って帰れよ」って言う。