ビオラ、すずらん、年下の君
お店の選択は羽田さんにお任せだったんだけど、会社から歩いて15分ほどの繁華街にあるビル3階の洋風居酒屋に入った私は、少しビビった。


「いらっしゃいませ~どうぞこちらへ!」


お兄さんに案内され、辿り着いた席はカーテンに仕切られ、靴を脱いで上がる『個室』で。
しかも、やたらムーディな照明に濃いピンク色のふかふか絨毯(暗いので赤にも見える)。小さめのテーブルの周りには、大小幾つかのクッション。


なんかシチュエーション的にエロい。

恋人同士なら最高なんだろうけど、上司である羽田さんとこんな店で、しかもサシ飲むなんて…なんかヤダな。


「あ、佐原さん、上がって上がって」


急に無口になった私の顔色を伺うように羽田さんが明るい声で言う。


もお…実は私、座敷って苦手。
子供の頃からダイニングテーブルでご飯食べる洋風な生活してるから、膝を畳むようにしてモノを咀嚼するのに、慣れてない。

テーブルの下で足をまっすぐ伸ばしちゃいところだけど、膝上5センチのスカートにナマ脚ではそれも憚れる。

仕方なく正座した。







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