ビオラ、すずらん、年下の君
でも、もう気にならない。
爽やかな朝、小鳥のさえずり。
イヤフォンで何かを聴く君の涼しい横顔。
朝から目の保養、ありがとう!って、言いたい気分。
私は、心の中でそのイケメン高校生を
『ハルマくん』と名付けた。
その時間、バス停を使うのは私とハルマくんだけで。
私が立っていると、ハルマくんはスポーツ・バッグを肩に掛け、ゆっくりやってくる。
バス停に着くと、スマホから目を離し、一瞬、私を真っ直ぐに見る。
ーーおはよう。大丈夫。まだバス来てないよ。
私もハルマくんと視線を合わせる。
そして、2人で並ぶ。
大きなポプラの木の下で。
少しだけある木陰を見つけ2人で逃げ込む。
ーー朝陽が眩し過ぎ。もう少し影が出来てくれればいいのに。
ーーバス、今日も遅れてくるんだろうな、早く来ないかなあ。
同じ目的。多分同じ思考。
なんとなく連帯感。
ゴールデンウィーク明けの頃になると、彼はわずかに頷くようにして挨拶をしてくれるようになった。
礼儀正しい子なんだな、と更に好感度アップ。
私が高校生の頃、こんなレベルの男の子には縁がなかったな。
各学年に何人かいるカッコいくて、スポーツマンでクラスの人気者。
当然モテる。
私も仲良くなりたかったけれど、彼らの周りには、すでに複数の取り巻きがいた。