ビオラ、すずらん、年下の君
「今日は歓迎会だから。佐原さん遠慮なく好きなもの頼めよ」
「あ、ありがとうございます。どうしようかな…」
と言っても、おごりだと思うとそうもいかない。羽田さんと相談しながらアボカドと生ハムのピザ、サテ、真鯛のカルパッチョ、スティック野菜のピクルスをオーダー。
意外にも羽田さんはお酒がダメでジンジャーエール、私はキウイサワーにした。
「佐原さん、ラクにしろよ。足を伸ばしな」
なんて羽田さんは言うけど。
「いえ、大丈夫です…」
出来るわけないじゃん。それとも私の脚、見たい?
じわじわ、膝のサラが痛くなってきたよ…
「ホラ」
羽田さんが赤いホワホワしたものをひらりと私の横に放り投げた。
それは、店備え付けの膝掛け。
「ありがとう」
私は素直に受け取り、大判のそれを広げた。脚を伸ばしてもこれで覆えば恥ずかしくない。冷房からも守れる。
女の子には嬉しい配慮だ。
「俺、飲まないから店知らなくて。女子に人気の店で検索して見つけたんだけど、歓迎会にはそぐわなかったね。ごめんね」
眼鏡の奥の目を瞬かせつつ、羽田さんが謝るのに、私はブンブンと左手を振った。