ビオラ、すずらん、年下の君
羽田さんはとても深刻な顔をして、ピーチメルバを見つめていたから。
私、なんか悪いこと言ってしまった?お酒飲めないことがそんなにコンプレックスだったのかな?
羽田さんの心に土足で踏み込んじゃったかな…
「最近はノンアルとかお酒っぽいのありますし、そういうので気分だけでも、」
「俺さ」
羽田さんが私の言葉を遮った。
今まで見たことがない、思いつめたような顔をしてる。
「ど、どうしたんですか?」
「…大学卒業して、就職した会社で派閥争いに巻き込まれてさ。ノイローゼになり掛けた頃、大学の先輩だった今の会社のエグゼクティブ・マネージャーに声掛けて貰ってふたつ返事で転職した。
でもさ、入ってすぐに気付いた。この会社、限りなくブラックだって。
業績が悪ければ契約社員に格下げ、ボーナス大幅カット。新規契約のノルマを押し付けられる。
理不尽な社命に苦しんで辞めていくやつを何人も見てきた。3年前に入社して以来、何度も何度も辞めようって思った。
幸い、俺自身はそれほどひどい仕打ちは受けなかったけど、会社の方針に心底嫌気がさして、辞表書いて、机の引き出しにいれていた時期もある」
「うん…」
カルーアミルクをテーブルに置き、私は、再び正座をした。