ビオラ、すずらん、年下の君
馬場友が初めて、ワーク・コーディネーターとして出勤した朝。

野郎は私の顔を見るなり
「佐原、コーヒー、ブラックで」
と言いつけた。


いきなり呼び捨てにされた上に、ウェイトレス扱いされた。

そう言われても、あんたのカップなんてどこにもないし…


ムッとしながら、未決の書類を広げると、

「俺のマイカップ、これな」

真っ黒な大ぶりのコーヒー・カップが私のデスクに、ボンと置かれた。


顔を上げると、馬場友がニヤニヤしていた。


「これからは俺があんたの上司だから。これは業務命令だよ?」


…分かりました、と私はシブシブ立ち上がった。

はあ、めんどくさ。
羽田さんとは天と地ほど違う。

陰険OLだったら雑巾の絞り汁でコーヒーを淹れてやるところだけど、もちろん私はそんなことをしなかった。

うざい上司の前では、口数の少ない女を装うのが一番。あとは黙々と与えられた仕事をこなすのみ!


アドレス交換したのに、羽田さんからメールは来なかった。
聡太君もLINEしてくれなかった。


こっちからしてみようかな…と思ったけれど、今の私は愚痴だらけの黒い塊だ。

どちらも、向こうからのアクションが来るまで待とう。





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