ビオラ、すずらん、年下の君
チェックのスカートを短くして、綺麗な髪を自慢げに掻き上げる女達。


無理だ……
あの子達と私は違うもの。


想いを心に隠した私は、ただの同級生として存在するだけ。


高校の制服を脱いで、7年経った今。
私は、あの頃の恥ずかしがり屋の処女じゃない。少しは男の心理を知ってるつもり。


だから、私もにっこりと笑顔を返す。
出来るだけ、魅力的な年上の女に見えるように。

服装にも気を使ってる。

やっぱ、スカートにヒール最強だよね。


ハルマくんの姿を見るだけでときめく。元気になれる。こういうの人生に大切。仕事、頑張ろうって気になれる。




曇り空の梅雨の月曜日。

ハルマくんは左の肘から手首にかけて、白い包帯を巻いていた。


どうしたんだろう…?
骨折かな?痛そう。


「あ、」

ハルマくんがビニール傘を持ち直そうとした途端、肩に掛けたスポーツバッグがずり落ち、スマホが地面に投げ出されてしまった。


少し湿った土の地面に落ちたそれを私は素早くかがみ、拾ってあげた。


「はい!」


臙脂色の革製のスマホカバーに
ついた砂を軽くはらって。


「あ、あざっす」


彼の指が一瞬、私の手のひらに触れた。
照れたような可愛い笑顔。


「…腕、どうしたんですか?」


自然に私の口から言葉が出た。初めての会話。





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