ビオラ、すずらん、年下の君
教室でかわすような馬鹿げた会話をグダグダと続けながら、教室を出て、家路につく。


「まさかなあ、お前が年上に恋するとはなー。なるほどな、OLときたか。
でもよ、こっちは未成年だし、淫行条例とかOL側はヤバイんじゃないか?」


「あのなあ、淫行とかお前な…
確かに、あの人に対して憧れがあるのは認めるよ」


「逢いたくて毎日同じバスに乗ってるんだろ?恋だよ恋。それは。ま、相手にされるかは疑問符が付くがな」

沢村はククッと笑った。


「……じゃな」

俺はそっけなく、いつもの三叉路を曲がった。居候先の吉田煙草店はここから100メートルほどだ。
ガードレールの狭い歩道を1人で歩くうち、沢村の投げた【恋】というフレーズが俺の中で、水紋のように徐々に広がっていった。


恋、恋。

「わかこ」

名前を呟くと嬉しくなる。


今まで、彼女を作ったことがないわけじゃない。
気が合うな、とか、いい子だなって思った子と付き合った。


でも、サッカーに夢中な人生を送っていて、女の子にわがまま言われるとソッコー冷めていた俺。


わかこは、俺の知ってる女の子達とは違う。

とにかく、わかこといると俺は生きてるって思う。わくわくする。




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