ビオラ、すずらん、年下の君
「じゃ、行くか。ピザでもパスタでもなんでも」
「わあ、やった!吉田君的には何がいい?」
「袴田にお任せするよ」
「じゃ、やっぱイタリアンかな。そこね、ドリンクバーがあって、いちごオレがメチャメチャ美味しんだよ」
よっぽど嬉しいのか、袴田は興奮気味だ。通学バッグをブンブン振り回し、ショッピングモール内の遊歩道をスキップせんばかりの勢い。
少し落ち着けよ、と言いたくなるくらいに。
石畳みのプロムナードは、あちこちにオリーブの木が植えてあり、夕暮れ時の優しい風に揺れている。ムード満点だ。
俺と袴田の距離は微妙に離れているのに、人は俺たちをカップルだと思うんだろうな…なんて考えていると。
「あっ、アレかわいい!」
袴田がタタタッと駆け出した。
……甘ったるい匂いがしそうな下着屋。
「うっそ、安い!セットで1500円て。絶対お買い得…あ、これかわいい。サイズあるかな、買っちゃおうかなあ」
店先に並べられたブラとショーツのセット。袴田はハンガーに掛けられたそれを自分の身体に当てた。ひらひらレースついた白地にピンクの水玉模様の女の下着。
…そんなもの見せられても。
俺、一応、男子高校生。しかも受験生。
視線を上にして、空を見ながら待機するしかない。