ビオラ、すずらん、年下の君
「…買うんなら早く買えよ」
下着屋の前で立ち止まるなんて、恥ずかしすぎて。自覚なかったけど俺はうっすら赤面していたと思う。
「あっ、ごめんごめん、今はご飯だった!」
袴田は乱暴に商品を元に戻した。
パスタは、特別美味いというほどではなかったけど、メニューが多く値段もリーズナブルで学生には利用しやすい店だった。
俺がボンゴレセットに決めると、袴田も私もそれにする、と言ってメニューを閉じた。
パスタを待つ間、進路について話した。袴田はまだ、はっきりときめていない、と言う。
「吉田君は北海道のF大志望なんでしょ?」
知ってるんだ。
「北海道、私大好き。特に札幌。小学生の時、家族旅行したの。楽しかったな。食べ物も美味しいし、1度は住んでみたくて。
だから、北海道にある福祉関係の大学にしようかなって。ソーシャルワーカー目指そうかなって思ってるんだ…ただ」
袴田の表情が翳った。
「ただ?」
俺は惰性的にティーカップの中のイチゴオレをずずっと啜る。