ビオラ、すずらん、年下の君


「母親が大反対してるの。うち……
実は私が10歳の時、お父さんが病気で死んじゃって母子家庭なんだ。
その時からママは看護師の仕事に復帰して、兄2人と末っ子の私を一生懸命育ててくれた。

今はお兄さん達はもう社会人になって、寮に入ったり、独り暮らししてるの。だからママは私には、家にいて欲しいみたい。涼子が結婚以外でこの家を出るのはダメだって」


「へえ、そりゃ大変だ。心配なのは分かるけど」


「ん…まあ、なんとか説き伏せるけど。最終的には許してくれると思う。私もママに負けないくらい頑固だから」


「頑張れよ。たった1度の人生なんだし、親に縛られるなよ」


「わ、ありがと、元気出る!
北海道行ったら、吉田君も同じアパートに住んじゃったりして。部屋も隣同士とかさ。お醤油貸借りするの。どお?」


「お前なあ、ドラマの見過ぎ!」

俺は、ひゅっと手を伸ばして、袴田のおでこにデコピンしてやった。


「あっ…」

ストレートの前髪がぴょんと跳ねて、袴田の丸い目がさらに丸くなった。


「……」

軽くやったし、痛いわけないのに、袴田は俯いてしまった。





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