ビオラ、すずらん、年下の君
そして、目の前にいる女に無意識に失礼なことをしてしまったような…罪悪感に似た気持ち。
「思い込み激しいね。誰も探してなんかねえし」
少し息苦しくなった俺は伝票を掴み、立ち上がった。
帰りの電車は空いていて並んで座れた。
レストランを出た途端、袴田は明るさを取り戻した。まるで泣いたのが演技だったみたいに。
シートに座ると、先月、中田あずみとディズニーシーに遊びに行った話を聴かせてくれた。
俺は完全に聞き役。
この場合、その方が気楽だ。
さっき、湿っぽい雰囲気になってしまったの気にしてか、袴田は殊更明るく振舞っている気がした。
あと、もう少しで袴田の降りる駅に到着、という時。
「吉田君」
意を決したように切り出した。
「…受験終わったら、ディズニーランド行こうよ?」
「え?」
まただ。大きな黒目が小刻みに揺れている…怯えてる。
「あ、私と2人でじゃなくてもいいよ?あずみと沢村君も誘っても」
…断らないで。お願い。
袴田の目が縋っている。
今は受験に集中したい。遊びの計画なんて考えたくないんだけどね。
しばらくの間の後、俺が出した答え。