ビオラ、すずらん、年下の君
駆け出して自分の想いを伝えてしまいたい気持ちと、もう諦めた方が楽だという気持ちが交錯して混乱する。
でも、現実的に今、和香子を追いかけることは出来ない。
気付くとバスを乗り逃していた。誰もいないバス停。次は20分先。
ーー馬っ鹿だな…、
溜め息が出た。
夜の闇の中、再びイヤフォンを耳にあてがいながら思う。
優しい大人の男になりたい、と。
「……沢村をディズニーに誘うか。あいつはいつも暇だから大丈夫だろ」
独り言を言ったのは、胸の中で大きくなる和香子へと想いを紛らわせたかったから。
止めることは出来ないってことは既にもう、自分でも分かっていた。