ビオラ、すずらん、年下の君
私は、後ろから二番目の2人掛けのシートに腰を下ろした。
勝手に決めてる私の指定席。
ハルマくんは、いつも1番後ろのシートの真ん中にどさりと座る。
だけど、この日は違った。
私の後を追いかけるようにして、私の隣に座ったのだ。
「あざっす…」
大きな黒いスポーツバッグをどさりと通路に置いて。
「明日、必ず返します」
切れ長の奥二重まぶたの瞳で、私の顔を覗き込む。
白と黒の、コントラストがはっきりした人懐こい瞳。
「いいですよお…ていうか、強引に乗り込ませちゃったけど、帰りのバス代やお昼代いるよね?千円くらい貸そうか?」
何いってんの、私。完全に親戚のお節介叔母さん状態じゃん。声、うわずってるし。
「いやあ、悪いっす。大丈夫。友だちに借りるんで」
ハルマ君は、軽く頭を下げた。
そんな風にすると、君のしなやかで綺麗なうなじが強調される。
かぶりつきたくなるじゃない…
「コレ」
包帯を巻いた左腕をひょいとあげる。
「サッカー。おとといの試合中に足引っ掛けられて、ゴールに激突して。ヒビ入っちゃって」
「サッカー…そうなんだ、危険ね」
「ひっでえラフプレーされて。でもまあ時々あるし。あ…サッカー観ます?」
「あんま観ないかなあ…」
何気ない会話だけど楽しい。