ビオラ、すずらん、年下の君
「吉田煙草店よね?またガムが増えるわ」
呆れ顔のお母さんは、そう言うとリビングに戻って行った。
爺ちゃんと2人きりで出掛けるなんて、小学3年生の時以来だ。
当時うちのお父さんは出張の多くて不在がちだったから、おじいちゃんが父親の役目をしていた。
幼稚園の頃は、爺ちゃんの膝に座って食事をするのが習慣だったのに。
思春期になると、私は爺ちゃんのだらしなさ(下着のままウロウロする、部分入れ歯を放置する。読んだ新聞をグシャグシャにする…などなど)が許せなくて、忌み嫌い、シカトしていた。
カワイイ孫の変わり様に、おじいちゃんはオロオロしていたっけ…
「私も一緒に煙草店さん、行く!」
と叫んだ時、おじいちゃんの頬はみるみるうちに薔薇色に染まっていった。
「おおお、そうか。和香ちゃん行こう、行こう。アイス買ってやる。ハーゲンボーデンな、アレ美味いぞ!」
何、ハーゲン…って。
なんかミックスされてるけど、ま、いっか。
ウキウキしてるおじいちゃんには、悪いけど、私の目的は年寄り孝行じゃない。
……もしかしたら、聡太君に会えるかもっていう不純な動機。