ビオラ、すずらん、年下の君


多分、聡太君はいない。

聡太君の高校は昔からほぼ100パーの進学率。聡太君も例外なく予備校とか塾に通っていて、多忙を極めているだろうから。


会えるわけないけど…聡太君の上品なおばあちゃんに、聡太君が元気にしているか、訊けたら訊きたいな。


そんなことを考えながら、商店街を歩く。
私が子供の頃はもっと栄えていたけれど、今はシャッターが降りてる店舗がチラホラ。

この先に大型のショッピングセンターが出来たからね。
そんな中、吉田煙草店は頑張ってるんだ。


夏の日差しが強くて、アスファルトの照り返しがムワムワとした空気になってまとわり付いてくる。

麦藁帽子かぶってきたけど、日射病になりそう。

一見、痩せてて、か弱そうなおじいちゃんだけど、足が丈夫だから私より歩くの早い。きっと100歳まで長生きするね。


「まあまあ、源さん、こんにちは」


常連客のおじいちゃんの顔を見ると、ガラス窓の向こうで、吉田煙草店の女店主は愛想の良い笑顔を見せた。


久しぶりに見たけど、相変わらず小柄でカワイイおばあちゃんだ。
雪みたいな真っ白な銀髪がすごく綺麗で。




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