ビオラ、すずらん、年下の君


「今日も暑いですなあ、景気はどうですか?」

爺ちゃんがいかにもお馴染みさんぽく話し掛ける。


「全然、商店街を人が歩いてないですよ。暑いから、ショッピングモールの方が涼しくていいわね。ま、うちはいつも閑古鳥鳴いてますけど。さあさ、お茶でもいかが?中に入ってくださいよ」


聡太のおばあちゃんがニコニコ笑いながら、立ち上がった。

白地に控えめな花柄のワンピースがキュート。若い頃は、モテただろうな~なんとなく、鼻筋も口元が聡太君に似ている気がした。


「おお、ご馳走になるかね」

図々しく、おじいちゃんはガラスの引き戸を開けて中に入って行く。

吉田煙草店は住居兼店舗という造り。お菓子や食料、日用雑貨を売っている。私も子供の頃、何度か親と一緒に来たことがある。


でも、3軒隣にあった駄菓子屋の方が子供達にとってはワンダーランドだったから、地味なこの煙草店には特に思い入れはなかった。

十何年ぶりにお店の中に入った私は、愕然とした。


モノがすごく少ない……








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