ビオラ、すずらん、年下の君


私と聡太君は、15年前に既に出逢っていたのだ。


写真の中の聡太君は、子役になれそうなほどカワイイ。もっと背を伸ばして、顔の輪郭をシャープにして肩幅を広くすれば、18歳の吉田聡太君になる。


「和香ちゃん、どうしたの?」


稲子さんの心配顏に私は我に返った。


「あ、私…」


「ただいま!写真、見つかった?」


いきなり男の声がして、私は顔をあげた。
稲子おばあちゃんの後ろに聡太君が立っていた。
制服姿しか見たことなかったから、白いTシャツにGパンっていうラフな感じが新鮮。髪が伸びたみたいで少し大人びて見えた。


愛する孫の登場におばあちゃんは目を細める。


「あら。帰って来たの。写真あったのよ。電話しちゃってごめんなさいね。お祭りの準備は終わった?」


「俺のやることはね。午後から夏期講習だし」


どうやら聡太君は、外出先から戻ってきたところらしい。


「盆踊りのやぐらを組むお手伝いに駆り出されちゃって。男手が足りなくてね。ご苦労様でした」


孫相手にぺこりと頭を下げる稲子さん。


「あ、いや」

聡太君がはにかんだように笑ったあと、不意にこちらに視線を投げた。
私を真っ直ぐに見て、私達は見つめ合うような感じになる。







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