ビオラ、すずらん、年下の君

「そういえば、源さん。シンビジウムが元気ないの。葉の先が茶色っぽくなってしまって。ちょっと見てくれないかしら?」


聡太君がいる安心感から、稲子さんは爺ちゃんを母屋へと誘った。

ラン栽培は爺ちゃんの趣味のひとつ。うちでもカトレアだの、胡蝶蘭だのいくつか育てている。

稲子さんにいいとこ見せられるチャンスだから、「あいよ!どれどれ」と二つ返事で立ち上がった。


そして、取り残された私と聡太君は2人きりになった。
聡太君は、稲子さんのいた場所に腰を下ろし胡座をかいた。
長い脚を折り曲げて、ちょっと窮屈そうに。


見れば見るほど、爽やかでかっこいい。つい、見とれてしまう。
…どうしよう。なんか会話会話。


夏休み、楽しんでる?とか何してるの?とか訊いてみようかな…

また、親戚のおばちゃんキャラだけど…あ、あの写真!偶然だねえ、とかもいいかな?

なんて逡巡していると。先に口を開いたのは聡太君の方だった。


「昨日ばあちゃんから写真見せられた時、マジ驚いたよ。和香子さん、この頃から全然変わってないね。すぐ分かったよ」


写真を手にとって笑う。


「え、嘘?私、変わってない?」


久しぶりの会話。8才も年下の男の子にドキドキしている私。




< 70 / 159 >

この作品をシェア

pagetop