ビオラ、すずらん、年下の君
「そういえば、源さん。シンビジウムが元気ないの。葉の先が茶色っぽくなってしまって。ちょっと見てくれないかしら?」
聡太君がいる安心感から、稲子さんは爺ちゃんを母屋へと誘った。
ラン栽培は爺ちゃんの趣味のひとつ。うちでもカトレアだの、胡蝶蘭だのいくつか育てている。
稲子さんにいいとこ見せられるチャンスだから、「あいよ!どれどれ」と二つ返事で立ち上がった。
そして、取り残された私と聡太君は2人きりになった。
聡太君は、稲子さんのいた場所に腰を下ろし胡座をかいた。
長い脚を折り曲げて、ちょっと窮屈そうに。
見れば見るほど、爽やかでかっこいい。つい、見とれてしまう。
…どうしよう。なんか会話会話。
夏休み、楽しんでる?とか何してるの?とか訊いてみようかな…
また、親戚のおばちゃんキャラだけど…あ、あの写真!偶然だねえ、とかもいいかな?
なんて逡巡していると。先に口を開いたのは聡太君の方だった。
「昨日ばあちゃんから写真見せられた時、マジ驚いたよ。和香子さん、この頃から全然変わってないね。すぐ分かったよ」
写真を手にとって笑う。
「え、嘘?私、変わってない?」
久しぶりの会話。8才も年下の男の子にドキドキしている私。