ビオラ、すずらん、年下の君


メッセージの送り主は、目の前にいる男の子【よしだ聡太】君。


[もし暇だったら、夜、お祭り行きませんか?]


恥ずかしそうに、私を上目遣いに見てる。


クスクス笑いながら私は返信を打った。



和香子[いいですよ]


よしだ聡太[午後、夏期講習だから、6時にあのバス停待ち合わせでOK?]


和香子[分かりました]



聡太君の文字を打つ横顔が嬉しそうに笑っている。


よしだ聡太[やった!またラインするね。行ってきます]


和香子[いってらっしゃい♪]


私からのメッセージを読み終わると、聡太君はスマホを仕舞い、立ち上がった。天を仰いで深呼吸をする。

ふうう、と息をお腹から吐き出した後、小さくガッツポーズを作って、くるりと背を向けた。


聡太君も緊張していたんだ…

おそらく私以上に。


がやがや声がして、爺ちゃんと稲子おばあちゃんが戻ってきた。


私の心臓の鼓動は、ようやく正常に戻った。


それから私は大忙しだった。

吉田煙草店を出た後、爺ちゃんと別れ、そのままショッピングモールへと向かった。


そして、浴衣セット一式と下駄、籠バッグ、髪飾りなど速攻で購入。

家に帰ると、もう4時。すぐにお母さんに着付けをしてもらった。





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