ビオラ、すずらん、年下の君


『最高カワイイ……』


なんて罪な言葉くれちゃうの。


祭りの雑踏の中、全身がしびれて私は動けなくなってしまった。

聡太君の金魚すくいの腕前が見たいのに。




天国から地獄(ちと大げさだが)に転がり落ちたみたい。
羽田さんがいなくなってから、職場の環境は日に日に悪くなっていった。
諸悪の根源は馬場友。みんなみんなヤツのせい。


今の世の中、よほどのスキルがないと、いい仕事になんてありつけるわけがない。それなのに仕事を探す人はいろいろ条件を付けてくるワケで。

求職者の要望アレコレと、派遣内容のすり合わせが短気で面倒臭がりの馬場には出来ないんだ。


「おたくね、それじゃあ仕事ないよ!
自分の能力見極めないと!」


まただ……
こんな小さな派遣会社に登録してくれてるんだから、相手は貴重なお客様なのに。インタビュー(面談)にやってきた求職者(スタッフ)に対して、馬場の奴は平気で声を荒げ、失礼なセリフを吐く。


羽田さんは絶対そんなことしなかった。

良さげな求人内容が新規でくると、それに合いそうなスタッフに直接電話して勧めたりしていた。

細かなケアが評判で羽田さんを頼りにしているスタッフも多かった。


羽田さんが築いた信頼関係を、後任の馬場友は見事にぶち壊してくれた。




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