ビオラ、すずらん、年下の君


登録希望者や求職者が激減してしまい、面談に訪れる人がいなくなってしまった。


「ふう、最近の若い奴らは贅沢ばかり言ってしようがねえな。フリーターなんてろくでもねえわ。日本はもうお陀仏だわな」


バインダーを抱え、耳をほじりながら、私の向かいの席に座る。


「……」無言の私。


「な、佐原さん」


「…なんですか?」


「今度俺の歓迎会やってよ」


…はあ?誰がお前を歓迎するっちゅうんじゃ!意味わかんない!


「すみません、今、入力中なんで話しかけないで下さい!」


キーボードを叩く指がワナワナと震える。


「おお、コワコワ。カワイイ顔が台無しだよ」


馬場友は外人みたいに手のひらを上に向けて肩をすくめる。うるせー。


私が思い切り嫌ってるのに全然気付かない、鈍感な奴。


人が来ないから、馬場友と2人きりで過ごす時間が長くなる。


本社兼務のエグゼクティブ・マネージャー(営業所長)は、月に2度くらいしか来ない。
それをいいことに馬場友は、大好きなエロ雑誌を私の目の前でも平気でそれを広げる。

私は見ないふりをしてるけど、たまに油断して表紙の文字を読んでしまうのだ。
というかわざと見えるようにしてるんだと思う。


『若妻の大胆下半身事情』だの
『絶対ヤレるJKの見分け方』
だの。






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