ビオラ、すずらん、年下の君


「そうなの。ところで高校どこ?何年生なの?」


サッカーの知識がない私は、そんな世間話するしかない。おばさんみたいだけど仕方ない。


「K高校3年です」


「わ、すごいね!」

県内でもレベルの高い高校。
制服、変わったんだ。
ちなみに私はワンランク下の公立高出身。

「…これから、仕事ですか?」


ハルマくんから訊いてきた。


「うん。そうなの。小さな人材派遣会社で事務してるんだ。バス降りたらJR乗って地下鉄乗って、通勤に1時間半もかかるの」


「へえー大変すね、往復3時間…」


ハルマくんが、少しオーバーに
目を丸くした。


「でも、20枚くらい履歴書書いてやっと見つけた転職先だから…」


プー!と音が鳴り、バスが目的地に着いたことを知らせる。

残念。話の途中なのに。


ハルマくんは目だけで挨拶すると、立ち上がりさっさと前の方へいってしまった。


でも。バス代を貸した一件は大正解だった。
次の日からハルマくんと私の距離はグンと縮まったのだから。


バス停で会うなり、昨日はありがとうございました、とはにかんで、ズボンのポケットから230円ピタリの硬貨を取り出して、私に寄越した。


「どういたしまして」


私はハルマくんを見上げるようにする。



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