ビオラ、すずらん、年下の君


私の乏しい恋愛遍歴の中で、こんなに優しくて大事にしてくれる感じの人っていたかな?
素直に嬉しかった。


だから私の口から「…ありがとう」と自然にお礼の言葉が出ていた。


しばらく私と羽田さんは見つめ合った。


ああ、羽田さんの目はくっきり二人瞼なんだ。可愛いい…再認識。


ビューラーとアイライナーで誤魔化してるけど、実は私、がっつり一重瞼。そして黒目が大きいので小5の時、口の悪い男子に「ハニワ」ってアダ名付けられた。

それが中学まで尾を引いて、友達からも「ハニワちゃん」って時々呼ばれるハメになったっけ


まあ、いいんだけど。私、埴輪、好きだか…「…じゃ、」

羽田さんの乾いた唇が動き出した。


「また何かあったら、メールして。俺が出来ることならなんでも協力するから。ストレスを溜め込むなよ」


「あ、はい。ありがとうございます。ご馳走様でした」


「じゃ、お休み」


羽田さんは名残惜しそうに、私の家の前から立ち去った。

私は玄関の鍵を差し込んだまま、しばらく自分の思考に浸った。


温泉かあ~

彼氏と温泉なんて夢だった!
浴衣着て、湯上りにビールなんて飲んじゃって。


あれ?いつの間にか、羽田さん、私の彼氏になってる?

つまりこれって、恋の始まりだよね?
な、はずなのに、あんまりこう、キュン!とする感じがないんですけど……


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