ビオラ、すずらん、年下の君
まあ、いっか。ゆっくり好きになればいい。徐々にトーストに染み込んでいく蜂蜜みたいに。

羽田さんの包み込むような優しさ、大好き。食事の仕方も普通に綺麗だし、タバコ吸わないし、動物好きだし、合格!


「ただいまあ!」

やっとドアを開いて、玄関に入ると。


「あれ…?」

見慣れないナイキのスニーカーが目に入った。新品ぽいそれは大きなサイズで男ものだ。


お父さんのかな?それにしても、緑色に赤いラインが入ったデザインは、熟年おじさんには派手過ぎる気が。

でも、お父さんは自分が普通のおじさんであることを否定している部分があるから、あえて若作りにしたのかも。


キッチンから煮物の匂いが漂ってくる。美味しそうだけど、今はお腹いっぱい。

そのまま2階に上がってバッグをベッドの上に放り投げた。


お風呂に入るために、パンティとブラジャーだけの下着姿になる。脱衣所じゃなくて、部屋で服を脱いでしまうのは小さい頃からの習慣だ。


爺ちゃんは8時に寝ちゃうし、お父さんの前に下着姿で出ていっても平気な私。

お父さん、目をそらして見ないから。マ、少しは目に入っちゃって、和香子も成長したな…とか思ってるかもしれないけど。


「お母さん!煮物、余ってる?明日のお弁当のおかずに、」


元気よくリビングのドアを開けた次の瞬間、信じられないものを目にした。



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