ビオラ、すずらん、年下の君
「あなたたち、毎朝、同じバスに乗ってるんですって?和香子、何も言わないから」
「そんなことイチイチ親に言わないよ」
「和香子ったら、いつの間にか秘密主義になっちゃって。昔は好きな男の子出来た、とか話してくれたのに」
「もう、そんなの小学生の時でしょうが…」
不満げに唇を尖らせるお母さんと、頬っぺたを膨らませる私に挟まれ、聡太君は最後の一口を咀嚼する。
「ご馳走様でした」
手を合わせた後、箸を揃えて置き、麦茶を飲んだ。
こくこくと小さく動く喉仏。お、男っぽいわ……
私もお母さんも目の端っこで聡太君の一挙手一投足をしっかり見てるの。
この家に若い男の子がいるなんて、しかもイケメン。嬉し過ぎ。
私達が盛り上がるのは、いた仕方ないことだ。
あ、そうだ、とお母さんがポンと手を叩いた。
「西瓜食べよっか?切ったのがあるから、和香子、冷蔵庫から出してちょ…」
と言い掛けて、和香子のパンツ丸出しの後ろ姿のことを思い出して、
「ああっ、やっぱりいい!お母さんがやるわ!」
と叫んだ。そんな様子が可笑しくて、聡太君が下を向いて小さく笑った。