ビオラ、すずらん、年下の君


真っ白な歯の笑顔が本当にカワイイ。


私は聡太君にお尻を向けないよう、蟹さん歩きでちょっとずつ風呂場に移動しながら、肝心なことを訊いた。


「ところで、なんで聡太君がここでご飯食べてるの?あ、もちろんウエルカムだけど」


それがね、とテーブルに皿とフォークを並べていたお母さんが表情を曇らせた。


「メールで話したいことがあるって言ったのは、この事なのよ。今年の暑さで吉田煙草店おばあちゃんが体調崩しちゃって、入院してしまったの。

聡太君、来年大学受験だし、お勉強に集中させてあげたいから、この家でしばらく預かることにしようって、爺ちゃんが言い出して。お母さんは大賛成よ」


嘘……

なんてこと?聡太君が同居?

こっ、この家に?


「今だからいうけど、私、昔ね、和香子に妹か弟、作ってやりたくて不妊治療したの。でも、いくら頑張っても出来なくて。一度だけ妊娠して大喜びしたけど、結局、駄目になってしまって…

聡太君がうちにいると息子が出来たみたいで、本当に嬉しいわ。なんだか夢が叶ったみたい!」


はしゃぐお母さんは、もう私のことなんてアウトオブ眼中で。


「スーパーで試食したの。とっても甘いのよ」

甲斐甲斐しく、聡太君の目の前に西瓜を盛り付けてやった。





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