ビオラ、すずらん、年下の君


背の高くて、ツルンとしたゆで卵みたいな肌のハルマくんは、若い木みたいだ。

そのそばにいると、その健やかさに、こっちも伸び伸びとした気持ちになれる。


昨日みたいに、同じ席に一緒に座った。
包帯が小さくなってる。

話の掴みにそこを突っ込もうとした矢先。


「これ」


ハルマくんが、小さなカードみたいなものを見せてくれた。


「ん、なあに?」

「学生証」


また、照れたような顔で私をちらり。


ハルマ君の本名は、吉田聡太くん。
そうたくん、そうたくん、そうたくん。
うん、すごく似合う。
真面目そうな顔写真は、髪が短めで幼く写っちゃってる。


「この写真イヤなんだ」


聡太くんが唇を尖らせる。
きゃーん、その顔、可愛いっ!
私は心の中で身をよじる。


「なんで?変じゃないよ」


私が(クールに)言うと、聡太くんは「イヤ」と首を振ったあと、

「これ撮った時、おたふく風邪が治ったばっかで」


と言って学生証を制服の胸ポケットに差し込んだ。


おたふく風邪……

大きくなってから掛かると、精子が出来なくなるとか、後遺症があったはず…
でも、それ言ったら聡太君に失礼だし。精子、とかそんな単語言えるわけないし。


「へえ。そうなんだ…」


会話が途切れちゃった。









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