ビオラ、すずらん、年下の君
朝、スマホのアラームで目が覚めた。1階に降りて顏を洗う。自分の部屋でメークをして髪を整えて、会社用の服に着替える。
いつものことなのに、同じ屋根の下に聡太君がいると思うとなんだか緊張してしまう。
私の部屋になんか入ってくるわけないのに、お片づけなんかしちゃったりして。使用済みティッシュやお菓子のカラ袋で溢れたゴミ箱なんて絶対見られたくないし!
ああ、意識し過ぎ。
早く下に降りて、聡太君に会いたいような会いたくないような。
私の王子様はスポーツ・バッグひとつに私物を詰め込んで、稲子おばあちゃんが退院して元気になるまでうちにいる。
一応、予定は9月末まで。期間限定とはいえ、こんな幸せなことあるかしら?
(稲子おばあちゃんに悪いけど)
聡太君には、1階にある6畳和室の客間を使ってもらうことになっていた。
ドキドキしながら、リビングルームのドアを開けた。
「あら、和香ちゃん、おはよう」
お母さんが振り返って私に挨拶をした。
「ゆうべの残り物でお弁当作っておいたからね」
「ありがとう、お母さん」
食卓テーブルには、すでに爺ちゃんと聡太君が仲良く並んで朝食を食べていた。