ビオラ、すずらん、年下の君


「うん。俺が中2の時ね。従兄弟のお兄さんが車の免許取ったからドライブに連れてってくれたんだ。
『おい、峠行くぞ』って。

なんで峠?って思って訊いたら、『彼女と今度ドライブしたいから、その下見』だって。
なんだ、下心ありかよって感じだけど、まあ、暇だし付き合ったんだよね。行き先はT自然公園。
和香子、知ってる?」


いきなり聡太君の目線が私の瞳を射る。この子はそうやって、人の目を真っ直ぐに見つめるのが癖だ。どき、と再び心臓が跳ねる。…今度は少し小さく。私、少しずつ聡太君慣れしてきてるみたい。


「ん?T自然公園?知らないなあ」


「そうかあ。知るわけないか。うちの方ではメチャ有名なデカイ公園。
小中、遠足はそこだし、川遊びとかバーベキューも出来るから小さい頃はよく家族でピクニックに行ったよ。ワンコ連れでね」


生き生きと黒い瞳が輝いてる。こんなに自分から話してくれるの初めてだよ。嬉しいな。






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